今こそ留学へ 〜理系大学院生の留学〜

Bonjour! 生物資源科学専攻M2のみおです。
2020年1月より、フランス ボルドー大学大学院に留学中です。( 現在は一時帰国中)
突然ですが、
あなたの身の回りで留学を経験している理系日本人学生はどれくらいいますか?
もしかしたら片手に収まる程度しかいないかもしれないですね。
「留学」というと、どちらかというと文系の学部生が言語や文化を学びに行くというようなイメージが先立つかもしれません。
実際に理系学生は大学の授業や研究で忙しく、そもそも「海外留学」なんて別世界の人がするもののように感じるかもしれません。
日本学生支援機構の調査によると、平成29年度の日本人留学生のうち
いわゆる文系の専攻(人文科学・社会科学・教育)の学生が全体の69.7%
理系の専攻(理学・工学・農学・保健)の学生が18.7%だったようです。
その差は歴然…圧倒的に理系の留学生が少ない。
なんでやねん。大阪と岡山のハーフの私は思うわけです。
研究は世界中で行われていますし、世界中の人と何かを発見していくことになるのです。
研究はすぐに結果が出ないからこそ、
ン十年も先の未来と世界の動向を掴んで研究していくのです。
広い視野が必要なのです。
それにサイエンスの共通言語は英語。言語の壁から逃げるわけにはいきません。
どうでしょう。
理系学生こそ留学すべきだと思いませんか?
・・・と、
ここまで理系理系言っていますが、私は理系学生の鏡のような人物ではありませんし、
たいそうに優れた研究者の卵でもありません。
植物が根を張った環境下で生き抜くメカニズムへの興味と同じか、それ以上に、
基礎研究を応用していく先の農業、食、人の暮らし、社会構造、文化、世界の未来にも
興味があります。
視野を広げたい。
視座を高めたい。
理系を選んだ私が留学に行ったっていいじゃないか。
しかし残念ながら私が留学を志した時点では
私の身の回りには理系で留学を経験した知り合いが多くなく、
どうしたら留学できるのか、留学後のキャリアはどうなっていくのか等々、なかなかビジョンを描くことができませんでした。
そうこうしているうちに
大学では短期研修に参加するだけで留学の機会を逃してしまった私は、
大学院で留学することにしました。
そこで今回は、理系大学院生の研究留学について私の経験をご紹介します。
理系の留学や、大学院での留学に興味がある方、今留学すべきか立ち止まっている方の参考に少しでもなればいいなと思います。
どうやって留学したのか
大学院での留学の方法は大きく分けて3つあります。
①海外の大学院に進学し、海外で学位を取る。(2年間)
②日本の大学院に進学し、交換留学で海外の大学に行く。(半年〜1年間)
③日本の大学院に進学し、教授のコネクションなどを利用して海外の研究室に研究員として所属する。(1ヶ月〜1年間)
そして今回私が選んだ方法は①〜③をハイブリットしたような
④ダブルディグリープログラムで、海外と日本の両大学で授業履修と研究を行い、修論を提出することで両大学の学位を取る。(留学期間は1年間)
というものです。
交換留学ではあるものの海外大学の学位も取れちゃう、研究もできちゃう、贅沢フルコースです。
しかし残念のながらダブルディグリープログラム(以下DDP)がある専攻は限られていますし、このプログラムで行ける大学院も限られているので、注意が必要です。
幸いなことに私が所属する生物資源科学専攻では、グローバルフードセキュリティコースと呼ばれるDDPがあるコースがあり、ボルドー大学、台湾大学、ユタ州立大学のいずれかに留学できます。
私は共同研究によって、植物の生存戦略とも言える生長メカニズムを、ボルドーにある世界唯一の酵素活性高速解析ロボットを用いて解き明かすため、
農業大国であるフランスで持続可能な農業を探りその技術を学ぶため、
Agrobiologyを学べるボルドー大学を選択し、2020年1月に渡仏しました。
留学の前半の半年間はラボインターンシップ。大学の研究室ではなく、国の研究機関でインターンシップという名の研究活動をします。
夏休みを挟んで、9月〜12月に授業を履修して試験を受けたら、
翌年1月に日本に帰国、修論審査を受け、3月には晴れて卒業となります。
(一時帰国中の今は全てオンラインに移行して継続しています)

ボルドーといえばワイン。中心街の入り口でブドウを咥えたカメ親子が人々を歓迎している
研究留学での気付き
◉まず、思っているようには行かないということ笑
予めスケジューリングされた大学の授業を履修する学部生留学とは違い、 研究留学では、指導教員や受入先の研究者と話し合いながら自分で研究計画を立て、実行に移していきます。 1年間かけてしっかり準備したのにも関わらず、やはり国を跨ぐとできないことがあったり、思わぬハプニングも多発します。
私の場合は、実験に使う植物の冷凍サンプルをフランスへ送るつもりで計画をしていたのですが、計画をしているうちに法が変わり、植物の輸送ができなくなってしまいました。
現地での研究も、誰も成功してない実験手法の修正が必要になり時間がかかったり、
他にも色々・・・
そんなハプニングも勉強のチャンスだと、頭を柔軟することが大事だと実感しました。
◉次に、研究ライフが全然違うこと!
なんと、お給料をいただきながら研究します。
フランスの修士生はラボなどで2~6ヶ月のインターンシップをすることが必修要件になっています。そして有難いことに、このインターンは有給なのです。(普通に生活できるレベル!なお全てのインターンが有給とは限りません。)
いわゆる日本で就活の一環で行う説明会兼職業体験的な"インターン"とは違い、フランスの修士生にとってはインターン後も継続して働けるか、就職前の試用期間的な場にもなりうるそうです。
修士以上の学生を研究者の卵として扱ってくれますし、私たちも研究所の一員としてしっかり働きます。
また、人間関係がかなりフラットです。
全員名前呼びです。修士生やポスドクはもちろん、研究グループのリーダーの博士に対しても、Mr.やDr.も付けず名前呼び。
先生方の部屋のドアはいつも少し開いていて、アポは取らず聞きたいことはいつでも聞きに行ってOK。(忙しい時はもちろん断られます)
変な緊張もいらず実験ができ、遠慮もいらず質問に行けるのはとても良い。
そして皆メリハリのあるラボライフを送っています。
インターン先の研究所が開いているのは平日の8:30~19:00のみ。しかも私のような修士生は18:00までしか実験できません。
皆朝9:00前後には来て、集中して実験に取り組みます。
ランチ休憩は1時間しっかり取ってコーヒーを飲んだら、
また午後から実験に戻り大体17:00~18:00には帰宅します。
パソコンをデスクに残して、家には仕事を持ち帰らない。土日はしっかり休む。
限られた時間内に実験を終わらすため、事前準備などはきっちりとやります。
日本ではぐたぐた夜中や土日まで実験をやっていた私にとって、
このメリハリのあるルーティンの中で毎日着実に研究を進めていくことが、なんとも心地の良いものでした。
そして平日頑張った分、土日はゆっくり過ごしたり、罪悪感なく思いっきり遊べるのも良いリフレッシュでした。
フランスでの研究ライフ楽しかったなあ。。(コロナの収束を祈るばかり)

研究室を出ると、虹が出ていた。ボルドーの3月は雨が降ったり止んだり、変わりやすい。
留学は今すぐ行こう
留学の仕方は思っているよりも多様で、自由です。
文系じゃなくても、交換留学じゃなくても、勉学以外のことをしに行くのも、海外の大学に行かなくても、何回でも、何日でも、何カ国でも、誰だって準備を整えられれば行けます。
そのための奨学金も多様にあります。
留学するタイミングに早いも遅いもありませんが、行きたいと思っているのならすぐにでも行動に移したほうがいいです。
え、でも今コロナだし、いつ行けるかわからないじゃん、、、
いやむしろ、こういうご時世だからこそ、今すぐ取り掛かるのが良いと思います。
留学は”成長するきっかけ”であり、
あなたの留学は志した時点でもう始まっています。
留学をしたいと思う時、自分が何をしたいのか、なぜそれをしたいのか、自分が何をどう学びたいか、限られた時間をより良くするために今何ができるか、留学に行った後どうなりたいのか、将来にどう活かせそうか等々、
自分の人生に目を向け自問自答を繰り返すことになります。
むしろ現地に行くまでが大変でした。
そうやって立ち止まりもがく時間は、後に人を大きくさせるはず。
それってもう"留学"と言って良くないですか?
海外に行くことそのものではなく、成長機会になることが留学の意義だと思います。
ということで、今すぐ留学に行きましょう〜!
最後までお読みいただきありがとうございました!
Merci beaucoup! À bientôt!

パンが異常に美味しいフランス。ボルドー発祥のお菓子カヌレも至る所で売られている。
P.S.
人生初ブログ、張り切りすぎて超長文になってしまいました。。
前置きから長くてすみません。
今回はこんな留学もあるよ、ということで
”理系大学院生の研究留学”に焦点を当ててみました。
現在はコロナで一時帰国中ですが、フランスでのロックダウンの様子など、また機会があれば投稿できればと考えております。