レジ袋有料化は無意味かも
こんにちは。ライターのりょうすけです。筑波大学の4年間では生物資源学を学び、現在は環境科学を専攻する修士1年生です。私はストレスの溜まらない性格ですが、たまにモヤモヤすることがあります。その一つがレジ袋の有料化です(いや、どこにモヤモヤしてんねん)。この記事に書かれてることは、科学者としてもひとりの大人としても未熟な者の見解ですが、読んでいただきフィードバックを頂ければ幸いです。

夜の山で何かを見たライター
レジ袋有料化は無意味かも
去年、2020年7月から全国の小売店でレジ袋が一律有料化されましたね。昔から謂わゆるエコバッグを使っていた方にとっては何てことない変化ですが、その習慣が無かった人や、レジ袋をごみ袋に有効利用していた人は不便に感じているでしょう。また、レジ袋が万引き対策となっていた店舗や、「レジ袋いりますか?」によるトラブルに悩まされる店員にとっては迷惑な政策だと思います。私もこの政策に反対の一人です。今回はレジ袋の有料化がどれだけ意味のない政策かということを政府のデータを基に示したいと思います。
なぜレジ袋は有料化された?
まず初めに、なぜレジ袋は有料化されたのでしょう?深掘りすればそれは役人の天下りやらレジ袋製造企業の企みやら、世の中の汚い人たちが裏で働いて決められたことなのかもしれません(あくまで推測)。しかしとりあえず、表向きではレジ袋有料化の理由は次のようです。

ガイドラインのURL
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/document/guideline.pdf
レジ袋有料化とはそもそも経済産業省によって決められたルールです。「環境のために!」有料化した人達は一方で経済を第一優先とする人達でもあるというところにも怪しい匂いを感じますが、とりあえず経産省の、レジ袋有料化の理由が妥当なのか見ていきましょう。経産省は主に次の3つをレジ袋有料化の理由にしています。
1. 資源・廃棄物制約
2. 海洋ごみ問題
3. 地球温暖化
今回は2. 海洋ごみ問題について見ていきます。(1.3.に関しては勉強してから投稿したいと思います。)
レジ袋を減らしても海洋ごみは減らない
海洋ごみ問題はその名の通り、人の出したごみが海洋に漂流したり溜まったりして、生態系に何らかの悪影響を与えることを指していると思います。レジ袋に関して見たとき、海洋ごみ問題とは、最近注目されている「海洋プラスチック問題」のことを指しているのでしょう。私は海洋プラスチックが生態系にどれほどの影響を与えているのか知りませんが、もし悪影響があるのならば、プラスチックが海に流れてしまうことは避けたいと考えています。海洋プラスチックを減らすことを理由にレジ袋有料化に賛成している人も多いと思います。では、レジ袋を減らすと、海洋プラスチックは本当に減るのでしょうか。それを議論するには次のデータが大事でしょう。
1. 海洋プラスチックごみ全体に占める、レジ袋の割合
2. 1の割合に占める、日本が出すレジ袋の割合
それでは二つについてそれぞれ見ていきましょう。


レジ袋は海洋ごみのごくごくわずか
1.に関して、環境省興味深いデータがあります。

表1. 参照元:環境省 (P. 78) https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-03/y031203-s1r.pdf
このデータは、平成28年度に全国10地点で漂流ごみのモニタリング調査の結果得られたものです。漂流するプラスチックごみの種類別内訳を示していますが、ポリ袋が全体に占める重量割合はたったの0.4%です。容積、個数をとってもそれぞれ0.3%, 0.6%に過ぎません。つまり、私たちが海洋ごみを減らしたいという目的で、レジ袋を我慢し、レジ袋の消費量を50%減らせたとします。しかし、よく頑張った!とはならず、その努力によって減る海洋プラスチックごみの割合は0.4% * 0.5 = 0.2%です。日本は2~6万トン/年のプラスチックごみを海洋に流出しているそうです(表2)。つまり、頑張ってレジ袋を半分に減らしても、海洋に流出するプラスチックの量が6万トンから59880トンに減るだけです。さらに、ポリ袋にはレジ袋以外の袋も含まれるはずなので、レジ袋削減が海洋プラスチックごみを減らす貢献度はさらに低くなるでしょう。
このデータは漂流ごみをモニタリングして得られたものです。つまり、レジ袋が分解され、マイクロプラスチックとなってしまった分はカウントされていないでしょう。「マイクロプラスチックの分を足したらもっと多いんじゃないのか!」という声が聞こえてきますが、そのようなデータを私はまだ見つけられていません。全てのプラスチックの生産から分解までのフローをデータとして手に入れるのは不可能でしょう。「レジ袋が海洋マイクロプラスチックを増やし、海洋の生態性に甚大な被害を与えているかもしれない」と思う方がいるかもしれませんが、それはあくまで推測に過ぎません。そのようなことを示すデータがあって初めて議論されるべきであり、そのようなデータが無い現段階では、先に示した表1のようなデータに基づいて考えていくのがまともでしょう。さらに、表1中の漂流プラスチックも、いずれは分解が進みマイクロプラスチックになると考えれば、このデータだけでも、海洋プラスチックを減らすのにレジ袋有料化が有効か議論するのに十分でしょう。

表2. 参照:環境省(P. 3) https://www.env.go.jp/water/marirne_litter/mpl1-d2.pdf
日本人だけが頑張っても意味がない
次に2.について考えます。日本人(日本に住む人)がどれだけ頑張っても、ごみの流出源が日本人でなかったら努力の意味がないですよね。さて実際はどうでしょう。

図1. 参照元:環境省 (P. 79) https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-03/y031203-s1r.pdf
上図は日本近海10地点で回収された漂流ペットボトルの製造国を示したものです。太平洋側特に九州近海では中国製、韓国製のペットボトルごみが多く確認されました。一方日本海側に漂流するペットボトルごみの約半分は日本から出ていると読み取れます。
もちろんペットボトルとレジ袋は違います。また、各国の国産のペットボトルの使用率も調べる必要があります。しかし、その辺のデータはまだ持ち合わせていないので、仮にプラスチックごみもペットボトルと同じく約半分が日本から、もう半分が外国から流れ出たと仮定してみましょう。すると、先ほどの0.2% (レジ袋を半減させた場合の海洋プラスチックの減る割合)はさらに半減し、0.1%となります。0.2%も0.1%もどんぐりの背比べですが。半分外国によって出されているごみを、日本人がどう足掻こうが減らすことはできません。"0.1%"、これを「減らした」と呼べるのでしょうか。私には無意味にしか思えません。
変な「きっかけ作り」
私が「レジ袋を有料化しても海洋ごみは減らないよ!」と友人に言うと、「環境を考えるきっかけになるじゃん?」と言う返事がよく返ってきます。環境省もレジ袋有料化の理由の一つに「きっかけ作り」を挙げているようです。しかし私はこれに納得いきません。確かに環境を考えることは大切です。しかし、きっかけ作り、とさえ言えば、無意味な努力を国民に強いても良いのでしょうか。「海洋ごみは減らせません。でもきっかけになりますから頑張ってください」これは一体何のきっかけか。私たちは何のためにレジ袋を我慢しているのかますます分からなくなってきました。日本人は元から自然が好きで環境を大切にしていると思っています。せめてきっかけを作るなら、きっかけ自体が本当に意味のあるものであるべきでしょう。国民の生活が豊かになる政策なら、少しおかしな理由でも私は賛同するかもしれません。しかし、レジ袋有料化で多くの人の生活は不便になりました(多分)。はたして、レジ袋有料化によって、国民に科された不便さを上回る利益が、国民にもたらされているのでしょうか。私にはそのようには思えません。レジ袋有料化が本当に私たち国民のために必要だという根拠が、経産省の理由からは見出せません。
最後に
今回いくつかのデータを示しました。どれも経産省や環境省のデータです。データや計算の適切さには疑問が残るところも多々あると思います。さらに議論、検証が必要な部分もありますが、「レジ袋を減らしても海洋ごみは減らない」ことは理解していただけたのではないでしょうか。レジ袋を有料化する本当の目的は、ダボス会議や京都議定書などの国際会議で採決されたことに対して、「日本もちゃんと努力していますよ」というアピールのためという部分が大きいでしょう。もしそうなら、レジ袋有料化では効果のない「海洋ごみを減らすため」などという目的ではなく、はっきり「アピールのため」と国民に伝えて欲しいと私は思います。それなら私も0.1%くらい納得がいきます。しかし、私が一番望むところは、日本政府が、今回のようなデータを基に「レジ袋は便利なものであり、日本人がレジ袋を減らしても、海洋ごみの削減に繋がらないから、これまで通り使い続けます。」と胸を張って世界に言ってくれることです。

レジ袋有料化が1. 資源・廃棄物制約と2. 地球温暖化防止に効果があるのかは私自身しっかり調べてからまたの機会に投稿したいと思います。
あの便利な無料レジ袋の再来を祈って....