ドイツ 加速する国民分断
更新日:2022年1月30日
こんにちは。ドイツ大学院留学中のりょうすけです。初めて過ごすドイツの冬、凍死するのではないかと怯えていましたが着込めば問題なさそうです。クリスマス明けから日照時間も長くなり気分も明るくなってきました。先日コロナ規制に反対するデモに参加したので体験談を記事にします。
エンデミックか?ワクチン義務化か?転換期を迎えるドイツや日本の記事も書きました。
https://www.utsukubalife.com/post/コロナ転換期
転換期?
オミクロンが流行り始めてから一度は世界の多くが規制を強めたが、オミクロンの弱毒性やワクチンによる予防効果が低いことが明らかになり規制を撤廃する国も出てきた。それがイギリスやデンマーク。規制解除の判断は政治的な要因も強かっただろう。しかし、世界に先駆けてコロナをインフルと同等に扱うと宣言したイギリス、そしてEUで初めて規制撤廃に踏み切ったデンマーク、この2カ国の判断が今後世界で参考にされることは間違いないだろう。
一方、規制を強化している国も多くある。ドイツ隣オーストリアではついにワクチン義務化が決まった。2月初旬から施行されるようだ。18歳以上のワクチン未接種者は3月中旬以降、46万円の罰金だそうだ(まるで夢を見ているよう)。イタリア、ギリシャでもそれぞれ50歳、60歳以上の未接種者への罰金が決まった。
日本もまん防が出され再び自粛や学級閉鎖が始まった。

オーストリアのワクチン義務化の報道
さてドイツでは昨年夏からとられているワクチンパスポート政策は現在も続いている。(ワクチンパスポートの詳細は前回の記事へ→ https://www.utsukubalife.com/post/ドイツでデモに参加した話)今後、規制を強化するのか緩和するのか2月〜3月に決断が下されそうだ。私自身は、ワクチンパスポートに反対である。自分の身体に得体の知れないものを注射するかしないかの判断は個人の自由であるべきと考えるし、科学的データに逆らって接種者と未接種者を区別することは差別にあたると考えるからだ。私の大学では、ワクチンパスポートによってクラスメイトの中で自分一人だけ対面授業に参加できない日々が2か月続いた。現在も未接種者は、スーパーと薬局以外の屋内施設の立ち入りを禁止されている。(ワクチンパスポートによる行動制限はこの記事に書きました。https://www.utsukubalife.com/post/ドイツでデモに参加した話)
ドイツを始め世界中でこの規制の不合理さに気付き、反対の声をあげる人々が増えた結果、世界同日開催デモというものが開催されるようになった。僕の住む街でも5000人規模のデモが行われたので参加した。デモの趣旨は、「科学的に合理的でないワクチンパスポートによって未接種者の人権を奪うことに反対。コロナ規制によって国民の人権、財産を奪うことに反対。」といったところが主である。

訳:「私はQRコードではなく人間だ。そして私には教育を受ける権利がある。」
世界同日デモの様子

大きな駐車場に集まる。この日は曇天

デモ行進開始。デモ隊は数百メートルに連なる。体感的には5000人以上いた気がするが正確な人数は分からない。
パンデミックの煽りに大きく加担したとして、テレビ局の前で怒りを訴えるデモ隊。
本題:目の当たりにした国民の分断
デモ行進は住宅街も通る。子供や大人が窓から興味深そうにデモの様子を眺めていた。

デモを眺める住人
デモを応援してくれる住人もいたが、中には反反ワクチンパスポートもいる。
左:訳:私たちはナチス(デモ隊)と共に歩かない。
右:デモ隊に向かってブーサインをする住人。
訳:Solidarity: 連帯、一致団結(意訳:国に従い全員ワクチン打って連帯すべき)

個人的衝撃シーン
訳:私たちは右翼(デモ隊)から距離を置き、支持しない
住人:「お前らはナチスだ!」デモ隊:「お前らこそがナチスだ!」
国民の分断が導くもの
ここから先は私の意見。
今回のデモで衝撃的だったのは国民の分断を目の当たりにしたことだ。私なりに考察したが、この状況は次の3つの理由から危険な状態だと感じた。
1. 政治に利用される。
2. 政治家による責任転嫁が起きる。
3. 怒りの矛先がすり替えられる。
1. 政治に利用される。
国民が分断することは、一部の政治家やビジネスマンにとっては非常に好ましい状態だ。多数派の意見を得るためには少数派を叩けばいいのである。本来国民は、何が国全体の国益となるか冷静に考えて政治家を選ぶことが大切である。しかし国民が分断され、目の前に敵が作られると、その敵を叩く政治家に票が集まってしまう。そのとき国民全体の幸福や国益といった本質的な議論は無視されてしまう。アメリカの二大政党制でよく目にするが、共和党を叩くことで民主党派の国民から支持を得る。逆もまた然り。本来は政策の本質を見極めなくてはいけないのに、目の前の敵を叩くことに必死になってしまうのだ。そして皮肉なのが、その敵は自国民であるということ。このまま分断が進めば政治家に利用され、常に片方が他方を抑えつける、分断に基づいた政策、差別が増えそうだ。
2. 政治家による責任転嫁が起きる。
国民の分断は責任転嫁という点でも政治家にとって好都合だ。コロナ対策に成功すれば政治家の手柄、失敗すれば国民のせい(今回は未接種者)のせいにすればいいのである。
「感染防止のため自粛をしてください。」「感染予防のためワクチンを打ってください。」とテレビで何度も主張していた政治家や専門家を覚えているだろうか。2年が経ち、自粛やワクチンの効果は当時より期待できないと明らかになってきた。そんなとき彼らは、感染拡大は未接種者のせいだと言い、責任転嫁する。(変異のせいと言って責任逃れする専門家もいるが、ウイルスの専門家なのに、変異を考慮していなかったとは言わせないぞ)。ドイツを始めとするコロナ規制に強権を発動している国ではそういう発言が目立つ。国民が団結していれば、「未接種者のせいにするな」という声が接種者から聞こえてきそうだが、分断された現状では難しい。
3. 怒りの矛先がすり替えられる。
2. に関連するが、コロナで失われた私たちの人生について、責任追求するべき相手は政府である。コロナが得体の知れないウイルスだった2020年上半期に飲食店をはじめ、国民に自粛を要請したのは仕方なかった。しかし2021年、日本では多くの店が倒産し、自殺者や失業者が増加した。更に日本は戦後最大の超過死亡を記録してしまったのである。ドイツでも経済的、精神的負担で大学を退学する学生が増えている。これらの原因の大部分は、政府の不適切なコロナ対応にあった。今こそ国民が団結して政府に責任を追求すべき! しかし、接種者と未接種者が罵倒し合っているようでは前に進めない。
国民分断が起きた背景
なぜ国民が分断されてしまうのか。その原因は、①議論の場を設けないこと、そして②政治家の自己責任論にあると私は考える。
①メディアは、2020年からコロナの危険性を異常に煽ることで視聴率を稼いできた。都合の良い専門家をスタジオに呼び、自粛の効果やワクチンの安全性を疑問視する専門家はテレビから排除した。世間レベルでも、コロナが危険というのは良いが、風邪というのはタブー。ワクチンの話もタブー。“議論させない”ことが国民のコロナに関する知識を偏らせ、対立関係を作らせた。今回のデモにおけるドイツ人同士の罵り合いも、私に目には、国民が議論を避けた結果として映った。
②もう一つの原因は政治家の自己責任論だ。「自粛」や「マスク」に法的拘束力はない。そこで政府は国民に「お願い」をする。自粛するかしないかは法的には国民の自由だ。しかし自粛警察、マスク警察で国民同士を対立させる。自粛によって潰れた店は?自粛したのは国民の勝手だから政府は補償しない。体育中にマスク着用で亡くなった小学生は?マスク着用したのは国民の判断だから責任を取らない。非常に汚いやり方だと感じる。国民に判断させて政府は責任を取らない、この構図も国民の分断を導いていると私は思う。
分断→団結へ

数千人を前に演説するドイツ人の友人たち(大学生)。
その勇気と行動力に頭が上がらない。
政府とメディアによる国民分断というのは今に始まったことではなく、大きな政治判断のたびに昔からずっと行われてきた。一昔前は戦争、最近は環境問題、数年前はLGBT、そして今年はコロナ。国民を右、左に分け、議論させないことによって対立させ、それが政治利用されてきた。彼らの策略に乗らないためにも、「私たちが責任追求するべき相手は誰なんだ?」ということを一歩下がって冷静に考え直したい。そして今は対立している人たちも、同じ国民なんだという意識が強まれば、嫌がる相手に無理やり注射を打たせることにストップをかけられるのではないか。そのような国民の意識の変化によって、コロナ禍を終わらせる日がいち早く日本とドイツに訪れることを祈っている。

ドイツ南部はStuttgart市から見える2022年元旦の夕日でお別れ。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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